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水曜ラベクル★『ナショナルトラスト発祥の地/港町バーマス』par北山裕子

2002.07.07

Visitons au coin de la rue , pour trouver notre specialite !

第9回『港町バーマス/イギリス』(‘02/07放送分)

いやぁ、今回は資料集めが難航し、我なら久々の徹夜仕事でくる年波を実感しました(涙)

その分多少でも、うっとおしい日本の梅雨から、暫し爽やかなイギリスの豊かな自然美の世界にトリップ&涼やかな一時をお楽しみ頂けていれば幸いです♪

日本でも最近更に高まりつつある、自然保護の草の根運動。

深大寺周辺や住民の働きかけで蘇った野川や多摩川他、多くの残したい風景(新しく「造り込む」公園等とは別に)を持つ私達にとっても、意味ある活動では?と改めて感じました。

さて番組の中でもご紹介したのですが、今回取り上げた港町バーマスは、実はナショナル・トラスト等に賛同する自然保護家の方々の他、鉄道(殊に蒸気機関車)の熱烈ファンの方々にとっても堪らない場所になっています。

『フェアボーン&バーマス蒸気鉄道』というバーマスとフェアボーンという在来線なら僅か8分の行程を蒸気機関車で結ぶ2.5Km/ゲージ12.25inchの現在も活躍中の鉄道があるのですが、何と乗るだけではなく、2時間~1週間までの4コースで、実際に機関車を運転できる「ミニSL運転・体験コース」を実施しています!!

また、この鉄道には

「Gorsafawddachaidraigodan heddogleddollonpenrhynareurdraethchredigion」というギネスブックに登録された世界一長い名前の駅もあり(一般に世界一と言われているブリットレイルの「LlanfairP.G.」より長い綴り/ウェールズ語なので、OAでは読めませんでした、悪しからず)、「世界一」好きの方にもお勧め?です。

1)

月に1度、ガイドブックにも殆ど出ていないヨーロッパの小さな村や町に、たった1つの出会いを求めて出掛ける、『お気に入りを探す旅』。。。

素敵な音楽と共に、本日もご一緒しましょう。

19世紀イギリスで生まれた、美しい自然や歴史的建造物を未来永劫に保存する事を目的にした民間非営利団体=ザ・ナショナル・トラスト。

僅か3人で始まったこの活動も今では会員220万人、世界最大の環境保護団体です。彼らが保有し管理する手付かずの豊かな自然が魅力的なワーズワースやピーターラビットの故郷=湖水地方。また各地に点在する古城や庭園らは、イギリスを訪れる多くの旅人を愉しませています。

本日訪れるのは、世界中に広まったナショナル・トラスト運動発祥の地=記念すべき最初の保護区「ディナス・オライ」の丘がある港町=バーマスです。

イギリス・ロンドン-ユーストン駅からブリット・レイル急行で、途中バーミンガム・ニュー・ストリートで乗換えてドービー・ジャンクション迄が4時間強。そこから在来線に乗換え1時間弱でバーマスに到着…ロンドンから約5時間の旅です。

Le destination d’aujourd hui est Barmouth…………。

2)

イギリスの西部、ウェールズ地方。

淡い色をたたえるアイリッシュの海を眺めながら列車に揺られていると、間もなく何の変哲もない小高い丘と浜辺に挟まれた小さな古い港町=バーマスに到着します。

灰色の石造りの建物が並ぶ市街地と地元の人々のささやかなリゾートである海辺を、背後から見下ろすのは野生の草花が生茂る緑の丘。この丘こそがザ・ナショナル・トラスト発祥の地、地元のウェールズ語で「光の要塞」を意味する「ディナス・オライ」です。

1760年代イギリスは産業革命を経験し、都市への人口集中や鉄道・工場の容赦ない開発で、かつては国民の誇りだった美しい自然や歴史的環境は次々と無残に破壊されていきました。人々の尊敬を集める詩人ワーズワースは「自然破壊はそこに住む人々の精神破壊につながる」と警鐘を鳴らし、湖水地方の鉄道建設はウィンダミア湖の手前で見事中止されましたが、追従したその他の自然保護運動は、結局下火になっていきました。

この状況を危惧したのが弁護士のロバート・ハンター、社会改良家の女性オクタビア・ヒル、牧師のハードウィック・ローンズリィの3人でした。

彼らが1895年、“美しい、或いは歴史的に重要な土地や建物を、国民の利益の為に永久に保存する土地所有団体”=「ザ・ナショナル・トラスト」の設立を表明するや、その「1人の1万ポンドより1万人の1ポンド」といったポリシーを含め大きな反響を呼び、多くの人々が寄付や資産の寄贈を申し入れました。

そんな中、彼らが最初の保護地に選んだのが、創始者の1人ヒルの友人=タルボット夫人が寄贈した丘=「ディナス・オライ」でした。

現在では200の歴史的建造物、160の英国式庭園、25の歴史的産業遺構を所有し、「ナショナル・トラスト運動の聖地」=広大で美しい自然の宝庫・湖水地方を保護する彼等にとってその総面積1.8hは確かにささやかな規模ですが、夫人の遺言通り一切の建築物がなく、低い木々と野生の草花の中に舗装されていない遊歩道があるのみの姿は、正に「みんなの為に、永遠に(Forever,For Everyone)」の理念を表し、記念碑として実に相応しいものです。

1907年、イギリス国会はナショナル・トラスト運動を奨励する数々の特権を法律に制定し、その後世界中に広まったこの運動は、日本でも鎌倉の鶴岡八幡宮裏の山林を皮切りに、白川郷、知床、奈良の葛城の道、最近では4割を子供達の寄付が占めた所沢の狭山丘陵「トトロの森」の保護…と、確実に息付いています。

淋しげな色彩に覆われたバーマスの港町。

「光の要塞」の名の通り明るい日差しがディナス・オライを照らす時、不意に魔法使いや妖精、空飛ぶ馬といった子供の頃に夢見たおとぎ話の住人達が、丘の木々の間からひょっこり顔を出しそうな、懐かしい錯覚を覚えます。

守ったつもりの自然に、守られ・包まれ・癒されて、いつしか童心に返ってしまっていたのは、

どうやら私達の方だったようです。。。

3)

今回ご一緒した、欠けがえない自然と歴史的遺産、実は何より心の豊かさを守るナショナル・トラスト運動発祥の地=バーマス…如何だったでしょうか。

それではまた、来月の旅をお楽しみに。

A la prochain fois !

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