〈藤京娯楽雑記19 キム・ジウン監督の2作品をおさらい〉-by 藤田京子-
- 2005.04.12
【キム・ジウン監督の2作品をおさらい】
いよいよ、今月23日から日本でも公開される、イ・ビョンホン主演の『甘い人生』。
シナリオを読む前に出演を決めたというほど監督への熱い思い入れがあった…
と聞いて、ジウン監督のこれまでの作品をチェック!
『甘い人生』に向けて準備体操とまいりましょう。
但し、ホラーの『箪笥』は除く…。やっぱりね、相変わらず怖がりでダメですホラーは。
ということで、まずは『クワイエット・ファミリー』(1998年)
お父さんがリストラされて、一家で始めた寂しい山里のペンション。
なぜか、泊まるお客さんが次々死んでしまう…。
その死体を必死で隠す6人家族の滑稽な姿が笑いを誘う、ブラックコメディ。
チェ・ミンシク、ソン・ガンホ(まだ若くてほっそりしているところがカワイイ)と、
実力派を揃えていかにも小心者の一家を真面目に演じさせているあたり、
監督の手腕を感じます。
ちなみに、三池崇史監督がこれを元にリメイクしたのが『カタクリ家の幸福』。
こちらは沢田研二、松坂慶子、忌野清志郎…と
濃い味の出演者をそろえて、歌うわ踊るわのミュージカル仕立てだったので、
それに較べるとやや地味~な感じは否めません。
でも、平凡な人間が我が身を守るために最初はこわごわと行った悪事が、
2度目以降は良心の呵責もどんどん薄れ、やがて流れ作業と化していくところが、
おかしくて、そしてとっても恐ろしい!
アイロニカルな題名を付けて観客に何かを考えてもらおう、という監督の試みは、
今回の『甘い人生』にも用いられています。
さてもう一作は『反則王』(1999年)
今度はソン・ガンホをメインに据えての格闘技コメディー。
遅刻の常習犯、営業成績もさっぱりで副支店長にニラまれる銀行員。
上司のヘッドロックをかわすためプロレス技を習おうと訪れたジムで、
子供の頃ヒーローとあがめていた反則レスラー・ウルトラタイガーマスクの写真を見つけ
がぜん、やる気まんまん。
ところが、彼自身が反則レスラーとしてデビューすることになり…。
これも、平凡な男がちょっとした決断をきっかけに
これまでの人生ではありえなかった経験をしていく、というお話。
ダメダメ男の変身振り(でも変身してもダメダメでダサダサだったりする)を、
ソン・ガンホが力むことなく、ごく自然に演じていて
本当にそこいら辺にいそうな兄ちゃんの雰囲気なのが、よい!
『JSA』「ナイス・ガイ」で日本でも人気・知名度Up↑のシン・ハギュンが、
ちらりとカメオ出演していて、これも見逃せないゾ。
と、普通の人々の変容ぶりを描いて評価を得てきたキム・ジウン監督。
『甘い人生』は、ただのアクション映画ではなく、
より美学的・哲学的に感情を表すジャンルであると考えるノワール映画として撮影した、
とインタビューでは語っています。
韓国映画として、もしかしたら新しいムードの映画になっているかもしれないし、
イ・ビョンホンも、新しい演技の境地を切り開いたかもしれない。
期待が大きく膨らんでいくばかり…。
日韓友情年の一環として、初の日韓同時期公開作品という冠もついているゆえ、
失敗は許されない?!
で、興行に貢献すべく、藤京は早々に前売り券を買いましたよ。
特典で付いてきたビョンホンポストカード、毎日眺めております。
………うっとり。