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水曜ラベクル★『ピーターパン誕生100年@Kirriemuir』par北山裕子

2004.04.16

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第28回『キリミュアの町/イギリス』(03/31/2004放送分)

この4月から、「素晴らしいカントリー音楽の世界」に迫る新コーナー=『Music Selection~Viva☆Country♪』(18:30過ぎ~テレマート・Radio Shoppingに続いて)も加わり、益々「怪しいヒート・アップ」を続ける、水曜日のラベンダー・クルーズ。
今後とも変わらぬご贔屓を、どうぞ宜しくお願い申し上げます∞

さて本題、戯曲『ピーター・パン』の初演から今年で100年。
今週末(4/17~)には映画『ピーター・パン』(美し~い☆ジェレミー君にうっとり♪≦ディズニー版とは趣の異なる、原作に沿った切ない内容◎)が公開され、本国イギリスでは、年間を通じて数々の記念イベントも開催されます!
今回はそんな「旬」?な話題に便乗(笑)⇒生前から多くの賞賛・栄光を手にしながら、哀しみに満ちた人生を送らざるをえなかった『ピーター・パン』の作者=バリーに触れる旅です。。。

1)
毎月最終水曜日この時間は、人知れぬ物語を秘めたヨーロッパの旅にお連れします。

自由に空を飛び回るディズニーアニメのヒーローとして、それとも、いつまでも大人になれないモラトリウム症候群の代名詞として、誰もがその名を知る「永遠の少年」=ピーター・パン。
その誕生は今から100年前、当初の姿は作者の数奇な人生を色濃く反映したものでした。

本日の目的地は1904年、ロンドンの劇場で初演を迎えた戯曲『ピーター・パン』の生みの親=J.Mバリー.の故郷キリミュアです。

イギリス・ロンドンからダンデーまでエジンバラ経由の列車で約6時間。更にキリミュアまでは車で30分少々です。

Le destination d’aujourd hui est Kirriemuir (キリミュア)…………。

2)
なだらかな牧草地に小麦畑、木立に囲まれた集落を抜ければ、かつては麻の手織り工場で栄えた、赤土レンガで出来た小さな町=キリミュアに到着です。
台所を入れて4部屋、裏通りの狭い長屋で1860年、ジェイムズ・マシュー・バリーは10人兄弟の9番目に生まれました。
読書家でお話し上手の母、兄弟との冒険ごっこ…貧しいながらも幸福な日々は、6才で終わりを告げます。次男が事故で亡くなり絶望した母は、その「永遠に13歳の息子」以外愛せなくなったのです。

大学卒業後、新聞記者を経て作家兼劇作家として成功するも、母の関心は引けなかったバリー。ロンドンの豪邸に莫大な資産と名声…が、結婚生活も妻の裏切りで幕を下ろします。

愛される事を諦めた彼の関心は、ケンジントン公園で知りあった質素な若手弁護士夫妻と、その美しい5人の息子達に向けられます。
彼らを喜ばせようと書き上げた、子供達と「生後1週間で成長が止まったケンジントン公園で妖精と暮す、親の愛を知らない男の子=ピーター」が登場する小説『小さな白い鳥』。…出版されるや大きな反響を呼び、度重なる手直しの末、後世に残る舞台『ピーター・パン』として、ロンドンで初演を迎えます。

3)
『ピーター・パン』の成功で得た、爵位に勲章、大学総長の座、夜間自由に彼の「ネヴァーランド」=ケンジントン公園に出入り出来る「個人用の鍵」。。。

その喜びも束の間、子供達の両親が、献身的な看病の甲斐なく相次いで病死します。
残された17歳から6歳の子供達をバリーは「私の息子」と呼び、彼らの幸福の為だけに一生を捧げる決心をします。…が運命は残酷にも、彼が最も愛したギリシャ彫刻のように凛々しく勇敢な長男ジョージ、美少女の面差しを持つナイーヴな四男マイケルの命を、戦争と事故で次々に奪い去ります。

『ピーター・パン』の版権を小児病院に寄付する等、その後も「全ての子供幸せ」の為に尽くしたバリー。
故郷の墓碑銘に刻まれているのは、ただ名前と日付だけ。「どんな肩書きも刻まない事」それが、華やかな賞賛の中、愛される事も愛する事も叶わずこの世を去った彼の「最後の望み」だったのです。

4)
今回ご一緒した、『ピーター・パン』の作者=バリーが生まれた町キリミュア、如何だったでしょうか?

それではまた、来月の旅をお楽しみに。
A la prochain fois !

【補足】
一般に知られているディズニー版『ピーター・パン』が「明るく勇敢・心優しい不思議な少年と子供達の、愉快な冒険ファンタジー(テーマは夢・冒険・家族愛)」…なのに対し、原作(戯曲版)は「冒険ファンタジーを絡めた、親の愛を知らず、例え望んでも大人にはなれない少年との出会いと別れ(テーマは子供時代の大切さ・親の愛の欠如が招く悲劇)」…と、筋書きはほぼ同じながら、実は大きく異なる2つのピーター・パン・ワールド(ロビン・ウィリアムズ『フック』に至っては、原作者の意図0%で/苦笑)。

そもそも戯曲『ピーター・パン』自体も、読者(観客)の要望に応える形で、小説『小さな白い鳥』→『ケンジントン公園のピーター・パン』→『ピーター・パンとウェンディ』→『ピーター・パン』と3回の変遷を重ねていて、当初のピーター・パンは、何と生後一週間の「親の愛を過信して失い、そのまま成長が止まり、普通の子供になりそこなってしまった《赤ん坊》」=しかも、ほんの脇役に過ぎず!

とはいえ作者が『ピーター・パン』に込めた思い(女性に裏切られ続けた彼∴母親~女の子に至る迄、その残酷さについては「かなり」辛辣に描かれてたり…/痛★)を読み解くには、この『小さな白い鳥』(図書館所蔵)、お薦めです◎◎◎

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