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水曜ラベクル★『SF冒険王ヴェルヌの故郷ナント』par北山裕子

2003.09.14

Visitons au coin de la rue , pour trouver notre specialite !
第21回『ナントの町/フランス』(09/03/‘03放送分)

残暑厳しき折、皆様如何お過ごしでしょうか?…と時節外れの挨拶がピッタリ来るこの異常気象★
この9月とは思えない強い日差しのお陰で、美肌を目指した筈の我が「遅~い夏休みin伊豆/露天風呂巡り」がマンマと「露天焼け」…気候までが肌の老化に拍車を掛けるんかいっ!ってな訳で、もう散々でございました。。。

さてこの2年続いた『旅』のコーナーも、来月からのラベンダークルーズ一部リニューアルに併せ、ちょっぴりお色直しすることに→そんな訳で、今回は個人的に非常~に思い入れのあるテーマ&町(大都市ゴメン)にスポットを当ててみました。
今では想像もつかない事に虚弱だった子供時代、外で遊ぶ友達を羨ましく眺めながら夢中で読み漁った、そんな私を自由な冒険に連れ出してくれる本たち…フランスへの興味の扉を開いてくれた作家ジュール・ヴェルヌ。
初めてのフランス留学の時、ユーレイルパス(周遊切符)とトーマスクック時刻表、辞書を抱えて、ゆかりの地を一人旅した思い出は、正に昨日の事のようです。。。

では以下、今月のOA本文と補足(オマケ)をどうぞ!

1)
夏休みも終わり、暫くバカンス気分はおあずけ、お楽しみは空想の中だけに…。
でも、この頭の中の冒険も中々捨てたものではありません。
19世紀、狭い塔に閉じ篭もりながら、当時、誰も思いつかなかった「驚異の旅」を次々に繰り広げて見せた作家がいました。
本日の行き先は、『八十日間世界一周』『月世界旅行』『海底二万里』等、現代社会への予見ともとれる、没後100年近くたっても色褪せない数々の名作を世に送り出したSF/科学冒険小説の父=ジュール・ヴェルヌを育んだ町ナントです。

フランス、パリ・モンパルナスからナントまでは、超高速鉄道TGVで約2時間です。

Le destination d’aujourd hui est Nante…………。

2)
パリから海底トンネルを経てロンドンに至る超高速鉄道TGV-アトランティックに乗り、目指すナントはフランス北西部・ブルターニュ地方最大の都市です。
大西洋へ注ぐロワール川の複雑な支流や川中島から成る天然の港として、古くは奴隷貿易で栄えたナント。
黒い鉄製の装飾…凝ったデザインの窓枠や時計台、塔や鐘楼を頂く壮麗な石造りの建物。至る所に見られる豊かな緑や公園、石畳を走る路面電車トラム、明るく解放的な人々…落着きと活気が共存する魅力的な町です。

ジュール・ヴェルヌは1828年、現在は埋め立てで陸続きになったフェイドー島に生まれ、幼い頃から行き交う船を眺めては、未知の世界への憧れを大きく膨らませていました。
11歳の時、従妹のカロリーヌに珊瑚の首飾りを贈りたい一心から、家出してインド行きの船に見習い水夫の名目で乗り込んだ彼は、最初の寄港地で父親に連れ戻されると「これからは夢の中でしか旅行しません」と誓い、生涯その約束を守ることになります。

冒険写真家ナダールに刺激を受け、世界的な大ベストセラーになった初の空想小説=当時の西欧人にとって未開の地だったアフリカを舞台にした冒険譚『気球に乗って5週間』を出版したのが34歳の時。
彼の才能にいち早く注目した大手出版社の社主エッツェルは、直ちに専属契約を結ぶと【驚異の旅シリーズ】と銘打って『地底探検』や『月世界旅行』、『海底二万里』等を次々に世に送り出し、当時の人々の度肝を抜きました。
一躍人気作家になり北のベニス=フランス北部の町アミアンに移ってからも、彼は小さなヨットと自宅に作られた小さな塔で執筆に専念し、遂に『聖書』『星の王子様』に次いで、世界中で最も翻訳されている本=『八十日間世界一周』を完成させます。

そんな彼を1886年、悲劇が襲います。
精神を病んだ甥にピストルで打たれ、60歳を前にして足と心に消えない傷を負ったその8日後、追い討ちを掛けるように最大の理解者=出版王エッツェルが亡くなります。
怪我の為、終生の友の葬儀にも出席出来なかった彼は、翌年母親も亡くすとヨットを売り払って益々執筆にのめり込み、生涯に80冊もの大作を残しました。
その作風は「科学の発展とバラ色の未来」から、原爆を連想させる『悪魔の発明』、世界征服をたくらむ空飛ぶ軍艦『征服者ロビュール』等、次第に悲観的なものへと変わっていきました。そんな中書かれた、『十五少年漂流記』=苦難の末に秩序と未来を掴む子供達の姿に、希望を託していたのかもしれません。

路面電車をマルティム駅で降り、海沿いの急な坂道を登れば白い瀟洒な館=ジュール・ヴェルヌ博物館に到着です。
港側から町を一望できる高台にある館内には、初版本や挿絵、各作品の舞台を紹介する地図やノーチラス号の模型等が並び、眺めているだけでワクワクします。

いつまでも、頭の中で夢一杯の冒険を繰り広げ、それを皆にも見せ続けたかったVerne。
物質的には彼の予測以上の未来を手に入れた私達…果たしてその活用法は、彼の願い通りになっているのでしょうか?

3)
今回ご一緒した、果てしない空想の旅への誘惑=ジュール・ヴェルヌの故郷ナント…如何だったでしょうか。

それではまた、来月の旅をお楽しみに。

A la prochain fois !

補足:
ディズニー映画や「不思議の海のナディア」の原作『海底二万里』、「ひょっこりひょうたん島」のモデルになった「動く人工島」、数々の宮崎アニメに影響を与えた空中都市や空飛ぶ要塞もの…と、作品自体は読んでいなくても、映画やジャパンアニメを通して私達に意外と?身近なヴェルヌ。
実は日本人好みの??切なく物悲しいエンディングの多い原作の世界も、この機会に是非お楽しみを。。。

本文にもあるように、ナントはフランスの都会では珍しい(苦笑)治安の良さと観光客等へのフレンドリーさが両立し、手付かず(風の)緑豊かな公園と海、石畳を走る路面電車と中世的ゴージャズ☆な路地が両立する魅力的な町=パリから日帰りOr一泊でもう少し足を伸ばしたい…とお考えの方に(ポピュラーなロワール古城巡り、海に浮かぶ教会モンサンミッシェル訪問と併せて)是非お薦めしたい地方都市です。

個人的には、ヴェルヌ博物館の館長が披露してくれた自説「後年ヴェルヌが多作にも関わらず作風が暗いのは、彼の奥さんが強欲で、印税欲しさに彼を塔に閉じ込めては執筆をせっついたせい」には、トホホながら共感・同情しきり(苦笑)でございました。

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