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第1回『バカラ村／フランス』（01/10放送分）

昨年の10月から、毎月第1水曜日のラベンダークルーズでチャレンジ？している『ラジオ：小さな旅』コーナー。

BBS亡き後？、CDプレゼント以外にも、OAお聴きになれない方との交流を持てればな…と思い立ち、（毎月本番前日、朝まで泣きながら？作っている＝毎月の事なのに。。。）OA草稿をご紹介する事に致しました。

音とはまた違った、文章の旅をお楽しみ下さい（というほど美文ではありませんが）！

また、皆さんからのアドヴァイスもお待ちしています！！！

1）

今月から始まったこのコーナーでは、月に一回、ラジオの前の皆さんと、

たった１つの建物＆たった１つのものとの出会いを求め、

ガイドブックにも殆ど出ていない主にヨーロッパの村や町に、ご一緒致しましょう。

第１回目の今日、皆さんとご一緒するのは、フランス北東部・ドイツと国境を接するロレーヌ地方の、観光ブックにも載っていない小さな村です。

ここで「あの」有名ブランド品を生産していなければ、今日（こんにち）もその名を知る人は殆ど居なかったかもしれません。

本日の行き先は、クリスタルの王者『バカラ』を生産するバカラ村です。

パリ東駅から在来線SNCFの特急でドイツとの国境の町ストラスブール行きに乗り、

アール・ヌーヴォー発祥の町ナンシーを越えた所にあるのがバカラ駅です。

パリから遥か400Km、所要時間約3時間の旅です。

Le destination d’aujourd hui est Baccarat…………。

2）

うっそうとした樹木と荒地、点在する僅かな民家…皆さんが想像するフランスの田舎プロヴァンスの豊かな田園風景とは全く趣の異なる、この寒村に、世界的なクリスタルメーカー＝バカラの大工場があります。

その敷地だけで10ha、村の人口約5000人の5分の1以上がガラス職人という、正にクリスタルの村です。ここでフランスのクリスタルの半分以上が生産されています。

そもそもこの地にバカラが1764年に創設されたのも、貧しい不毛の村の村おこしにの為でした。加えて、終結したばかりの7年戦争によるフランスの財政困難を、高級クリスタルの製造＆輸出で建て直そうと、時の国王ルイ15世の命により、国中の優秀なガラス職人が集められた、いわば国策＝国を挙げての一大プロジェクトだったのです。

クリスタルの、一般のガラスとは異なる独特の輝きの秘密…、それは『酸化鉛』、つまり鉛の含有量によるものです。

その含有率24％を超えるものだけが高級ガラス＝クリスタルを名乗る事が許され、バカラ社のそれは30％と定められています。

バカラと言うと先ず思い浮かべるのが、世界中で最も売れている、人気の『アルクール』シリーズでしょうか。聖杯の形に似ている事からバチカンでも使用されている、クリスタルの重量感を生かし、ざっくりとした、大胆かつモダンなカッティングの施されたこれは、1825年、アルクール公爵の為にデザインされたものです。

また、ブランデーグラスと言うとパッと連想される、丸い、バルーンを逆さにしたようなグラス、後にナポレオン3世にも愛用されたこれも、1844年パリ博覧会でバカラが発表したものでした。

古くから、王家や皇室関係にも愛されてきたバカラのクリスタル…これらを作るのは今日も一流の職人達です。

この工場には現在MOF(日本の無形文化財に当る)『フランス最優秀職人』が22名も居ます。

しかし、彼等の名前がその製品に刻まれる事は決してありません。

また、たった1つのグラスに60名もの職人が関わる事もありますが、その製品の約40％もが、最終検品で「バカラ製品として完璧ではない」と言う理由から、あっさり捨てられています。

それらの過程と全ての製品は、工場併設の城と教会を改装した「バカラ美術館」で見る事が出来ます。駐車場の向いには「バカラ・ブティック」もあって、その息吹に触れた後では決して「むやみに高価だ」と感じることは無いでしょう。

さて、その類稀な技をバカラ社に捧げる職人達にも、年に1回だけ、自分の作品を作る事が許されています。

それは商品として世に出回る事は決してない、自分や家族だけの為に作る事を許される、世界にただ1つのクリスタル。

きっと自宅のキッチンにズラリと並ぶそれこそが、彼等の誇りなのです。。。

3）

今回ご一緒した、フランス北東部、職人の誇りが息づくクリスタルの村「バカラ村」…

如何だったでしょうか。

それではまた、来月の旅をお楽しみに。

A la prochain fois　!