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水曜ラベクル★『昆虫記・ファーブルの理想郷セリニャン村』par北山裕子

2003.08.16

Visitons au coin de la rue , pour trouver notre specialite !
第20回『セリニャン村/フランス』(08/06/‘03放送分)

ほぼ月に1度のペースでお送りしてきた旅のコーナーも、ようやく20回を迎えました。
コラムの方も長尺解消(苦笑)の為、「勝手気侭&言いたい放題*試写会」は、また改めてアップしますね♪

それにしても、ホントにこれが「日本の夏???」=蒸し暑い梅雨が明けたと思ったら間もなく連日の冷たい雨。
ようやく夏のサンダルを揃えたと思ったら、殆ど活躍する間もなくブーツの季節に突入しそうな気配。ま、確かに夏の楽しみが「バーゲンのみ(キッパリ)」ってのも、よくよく考えれば能が無い訳で(純from「北の国から」風に…)。
今にして思えば、毎年分かっていながら溜めに溜めた宿題の山=ドリルに絵日記(オイオイ)、自由課題を気にしつつも、「未だ間に合うかな」と野っ原や川遊びに興じていた子供時代の充実&変化に富んだ夏が、あぁ懐かしい⇒これって歳かしらん。
…と無理矢理持ってきて、今回は自由研究のザ定番?「昆虫採集」→日本人に絶大な人気を誇る昆虫博士*ファーブル(今年で生誕180周年・フランスでは様々な企画展も)に迫る旅に、いざ行かん!!!

1)
月に1度、ガイドブックにも殆ど出ていないヨーロッパの小さな村や町に、たった1つの出会いを求めて出掛ける、『お気に入りを探す旅』。。。
素敵な音楽と共に、本日もご一緒しましょう。

夏休みの自由研究…野山に出ては日頃何気なく見過ごしていた植物や昆虫に目を凝らし、俄かに植物博士・昆虫博士気分を味わった事はありませんか?
虫眼鏡を片手に脳裏をよぎるのは、確か教科書に載っていたフンコロガシやアシナガバチの一生等、知られざる驚きに満ちたスモール・ワールド=虫達の世界を教えてくれた『昆虫記』の作者=ファーブルの姿ではないでしょうか?

本日の行き先は、長年にわたり教師を務め上げたアンリ・ファーブルが、人生の後半・55歳から亡くなる迄の36年間を過ごし、積年の夢だった研究と執筆に没頭した虫達の理想郷=アルマス(Harmas)が作られたセリニャン村ことセリニャン・ドゥ・コンタです。

フランス・パリからオランジュまでTGVで約3時間。そこから田舎のバスに乗換えれば、あと15分でセリニャン村に到着です。

Le destination d’aujourd hui est Serignan du Comtat…………。

2)
イタリアに向け南下する超高速列車TGVがパリ郊外を抜けると、辺り一面は田園風景。
飽きるほど続く畑に果樹園、牧草地…日差しが眩さを増してきたら、そこが南フランス・プロヴァンスの入り口です。
住宅街に唐突に現れる巨大な古代闘牛場や共同浴場跡…フランス最大のローマ遺跡の町オランジュ。寂しい駅前でバスに乗換え、ブドウ畑が連なる田舎道を進むと、パステルカラーの壁にオレンジの瓦屋根の家が並ぶ小さな村・セリニャン、その外れに現れるのが、鬱蒼とした木々が高い塀の上から溢れんばかりの長い長い白塗りの壁。
ここが本日の目的地、『昆虫記』の作者ファーブルの、そして虫達の理想郷=フランス語で「荒地」を意味する「アルマス」です。

1823年、南フランスの貧しい村サン・レオンに生まれたアンリ・ファーブル。小学校にすら4年しか通えず、満たされない知識欲を野生の草花や昆虫の観察に注いだ彼は、司祭の計らいで神学校に進むと次々に奨学金を獲得し、17歳で師範学校に主席で合格、すぐさま中学校の派遣教師に任命されました。
学問を教える事で生活を支え、コルシカ島、アヴィニヨン、オランジュと転任を重ねる傍ら、独自の観察に基づいた植物学や昆虫学の論文も発表するファーブル。
ところが教会が唱える「生命の神秘」にそぐわないそれらは悉く却下。最愛の息子も亡くした失意のファーブルは遂に教職を離れ、前借りした印税で古い家付きの1ヘクタールの荒地=Harmasを購入し、第二の人生を歩み出します。

打ち捨てられた土地に、延び放題の木々と数百種類に及ぶ野生の草花…。
巨大な温室も埋もれる豊かな手付かずの自然を好んだのは、ファーブルだけではありませんでした。そこは蝶々や蜂、かのフンコロガシやサソリに至るまで、無数の虫や小さな生命が集まるパラダイス。
広大な庭の散策を日課にしつつ、ファーブルは淡いピンクに塗り直された2階建ての自宅で、亡くなる迄の36年間に18冊の教科書と4シリーズに及ぶ『昆虫記』を書き上げました。

ファーブルがグルグル歩き回った為に机周辺のタイルだけが磨り減った自宅は、彼の死後、国が買い上げ、『昆虫記』の草稿や圧倒的に日本の物が多い各国で出版された関連書籍、2000種類の標本、700種類のデッサン、親交があったダーヴィンとの書簡等が並ぶ博物館に改装されました。
一方「フランスを代表する10の庭」にも認定された野生の庭は、実に当時のまま=「365日休みは無し、休息日は天国に召されてからだ。」と笑う管理人兼庭師の、これぞ誇りと責任感の賜物です。

村の墓地にあるファーブルのお墓には十字架がありません。最後まで教会に拒絶された彼を見送るように、墓石に止まった数匹のカマキリとテントウムシが、その日、一斉に空へと飛び立ったと言われています。。。

3)
暑さを忘れて虫取り網を片手に駆け回り、飽きる事なく蟻の行列に見入っていた眩い季節…今回ご一緒したファーブルの終の棲家=セリニャン村、如何だったでしょうか。
それではまた、次回の旅をお楽しみに。

A la prochain fois !

補足)
2000年、ファーブルの生まれ故郷=サン・レオン村に、ファーブルに因んだヨーロッパ最大の昆虫テーマパーク『ミクロポリス』が建設されました。岩肌に張り付くように建てられた巨大な芋虫状のミュージアムは、ナウシカ等の宮崎アニメの世界をも髣髴させます(笑)。
尚、ホームページは英語・仏語に加えて日本語バージョンがあり、施設案内の他、ファーブル年譜、昆虫研究の手引き等も紹介されています。

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