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水曜ラベクル★『きよしこの夜♪誕生の村オーベンドルフ』par北山裕子

2002.12.15

Visitons au coin de la rue , pour trouver notre specialite !
第13回『オーベンドルフ村/オーストリア』(’02/12放送分)

今回は年々前倒しスタートになっているクリスマス商戦&イルミネーション(苦笑)に追い付け、追い越せ?で、このシーズンに相応しい不朽のクリスマス・ソング誕生の村をご紹介しました(Update遅れてスミマセン)。

「ドイツ&オーストリア・ロマンチック街道の旅」等のツアーで実際に訪れた方も多いかもしれない「かの地」ですが、近年そのクリスマス・ソング誕生にまつわる謎が取沙汰され、論争が研究家達の間でヒートアップしています。
1995年、新たに見付かった作詞を担当したモーア牧師の原稿の書き込みから、実は(このあとご紹介する誕生秘話と異なり)この詞が作曲の4年ほど前に既になされていたらしい事。また現在知られている「原曲」とされているものは1820年に書き直されたもので、オリジナルの譜面の所在が未だ不明である事等々。。。とはいえ、長年親しんだこの曲の感動的な素晴らしさに何ら変わりはありません…。

現在はそれらの謎に関する資料も多数揃った「聖夜博物館」として公開されているザルツブルグのモーア牧師の生家でも、毎年その曲が誕生したといわれる12月24日午後5時にはオリジナルバージョン(とされているもの)が斉唱されています。

1)
月に1度、ガイドブックにも殆ど出ていないヨーロッパの小さな村や町に、たった1つの出会いを求めて出掛ける『お気に入りを探す旅』。。。
素敵な音楽と共に、本日もご一緒しましょう。

いよいよクリスマス月を迎え、慌しくも何やら心躍るこの時期。
デパートを始め多くの店先を飾る華やかなディスプレイにイルミネーション。カフェやレストラン、ケーキショップの特別メニュー。花屋に並ぶオーナメントやデコレーション。思い思いの飾り付けを施した家々の窓に映るツリーの点滅…そうした幸せな風景に加え、否応無しに気分を高めてくれるのは、街中に流れる数々のクリスマスソング。
『ジングルベル』や『サンタが町にやってくる』といった陽気なナンバーとは対照的に、厳かな気分になる一曲といえば、やはり『きよしこの夜』でしょうか。

本日の行き先は、名曲『きよしこの夜』誕生の村=オーベンドルフです。

オーストリア・ザルツブルグの中央駅から北行きのローカル電車で僅か25分。ドイツとの国境間近の村=オーベンドルフに到着です。

Le destination d’aujourd hui est Obendorf…………。

2)
オーストリア・ザルツブルグの北西へ約20km。深い針葉樹に囲まれ、近くを流れるU字型に蛇行したドイツとの国境の河=ザルツァッハ河の洪水に度々晒されてきた人口3000人の村が今回の目的地=オーベンドルフです。
川に平行した住宅街を北に10分も歩くと見えてくるのが、村外れの集落にポツンと佇む黒いドーム型の屋根にもうひとつ、小さな鐘楼が乗っただけの簡素で可愛らしい礼拝堂=それが
『きよしこの夜』が誕生した「聖ニコラウス教会」が洪水で流された跡地に1937年に建て直された「きよしこの夜記念カペル」です。

1818年のクリスマスイヴ、村の牧師ヨゼフ・モーアがクリスマス礼拝のリハーサルをと教会のオルガンを演奏したところ、弾けども踏めども音が出ない…オルガンが壊れていたのです。
礼拝は明日に迫り、雪深く貧しい村に飛んできてくれる修理職人が手配できる筈も無く、途方に暮れたモーア牧師は、村の学校のたった一人の教師で教会のオルガン奏者でもあったフランツ・クルーバーに、急遽「ギター伴奏の賛美歌」の作曲を依頼します。
「ギターで賛美歌なんてとんでもない!」と驚いたクルーバー先生ですが、モーア牧師自身が、前日赤ちゃんが生まれた山小屋を訪問した帰り道、静寂に包まれた雪明りの中下山しながら感じた清らかな感動を込めて書き上げたという美しい歌詞に心を打たれ、見事、即席でギター演奏の曲を完成させました。

そしてクリスマスの夜、凍りついた雪を踏みしめ教会に集まった村人たちは、生まれて始めてオルガン無しの礼拝を体験します。モーア神父がギターを弾きながらテノールで、クルーバー先生がバスで歌い、最後を12人の聖歌隊の子供たちが二部合唱で歌ったのが現在の賛美歌102番=クリスマスキャロル=最初の『きよしこの夜』です。

このシンプルで美しい曲に感動したのは、村人たちだけではありませんでした。
数週間後、ようやくチロルからやって来たオルガン技師はこの譜面をいたく気に入り、その後あちらこちらの教会を巡回する折、この曲も紹介し続けました。そんな中、いくつもの都市で手広く革製品の商いをするシュトラッセル家の人々がこの曲に注目します。かねてから新作発表時のアトラクションとしてフォークソングを唄っていた彼らは、1831年のライプツィヒを皮切りに新曲『きよしこの夜』をレパートリーに加えました。新しいクリスマスの曲に聴衆は魅了され、家や仕事場で口ずさむようになり、やがてドイツ系の移民と共に、海を越えアメリカにも渡っていきました。

こうした数奇な運命を辿り、200年近くたった今も世界中で愛され親しまれている『きよしこの夜』。
毎年12月24日のクリスマスイヴには、雪に覆われたこの小さな「きよしこの夜記念カペル」でギター伴奏のミサが行われ、心洗われる美しい演奏に触れようと世界中から多くの人々が訪れています。

3)
今回ご一緒した、今年のクリスマスは家族で穏やかに過ごしたい、そんな気分にさせられる『きよしこの夜』誕生の村=オーベンドルフ…如何だったでしょうか。
それではまた、来月の旅をお楽しみに。

A la prochain fois !

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