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水曜ラベクル★『バロックの迷宮ラグーサの町』par北山裕子

2002.11.14

Visitons au coin de la rue , pour trouver notre specialite !
第12回『ラグーサの町/イタリア・シチリア島』(11/’02放送分)

シチリア島と聞いて皆さんは何を連想しますか?
私の場合お恥ずかし乍ら、どうも♪タラ~ララ~ララ~ララ~ラ(←うわっ、何が何だか全然分からない)と頭の中で『ゴッドファーザー/愛のテーマ』がエンドレスで回ってしまいがち★
…が、なかなかどうして。小島でありながら地中海に浮かぶ立地柄、複雑な分割支配の歴史と文化を持ち、結果、実に個性豊かな小都市が数多く点在する事を知りました。
中でも私を惹き付けたのが、観光バスやツアーの団体客を拒否する事で、依然として中世さながらの美しい景観を今に残す『島の中の島(辺境への憧れを込めて)』『時が止まった街』『地中海のバロックの迷宮』=ヨーロッパの人々もその映像に溜息を漏らす≪イブラ≫と呼ばれる地域。。。
まるで秋が無かったかのように急に寒くなった冬を急ぐ日本をよそに、いざ行かむ!年間を通して温暖(むしろ暑い?)な「メディテラネ(地中海)」に!!

1)
月に1度、ガイドブックにも殆ど出ていないヨーロッパの小さな村や町に、たった1つの出会いを求めて出掛ける、『お気に入りを探す旅』。。。
素敵な音楽と共に、本日もご一緒しましょう。

先月27日のエトナ山噴火とそれに続く大地震で、今だ甚大な被害が出続けている地中海最大の島=イタリア・シチリア島。
漁業・農業の他、古代よりあらゆる民族の影響を受けてきた歴史を伝える数々の遺跡と芸術遺産による観光も今や島の重要な産業。かの地の一日も早い沈静化と復興を祈りつつ、今回は17世紀末=1693年のエトナ山大噴火の壊滅的被害から美しく蘇った、或る古い町並みを訪れます。
近年ヨーロッパでも再評価が進み人気が高まりつつあるこの地区は、映画「ゴットファーザー」とは全く異なる、優美で幻想的な世界へと旅人を誘います。

本日の行き先は、シチリア島屈指のバロックの迷宮:旧市街=イブラと新市街=スーペリオーレが共存する町=ラグーサです。

空港のあるカターニアの中央駅からシラクーサまで特急ユーロスターで1時間20分。在来線に乗り換えて、ラグーサまでは更に2時間。併せて約3時間半の列車の旅です。

Le destination d’aujourd hui est Ragusa…………。

2)
シチリア島南部・内陸に位置する青銅器時代から続く丘の町ラグーサは、シチリアの名門キアラモンテ家所領から大国スペインの有力貴族領、スペイン王室直轄と独特の変遷を遂げた為、現在シチリアで最も裕福な上生活水準も北イタリア並みに高く、またマフィアが居ない治安の良い町としても知られています。

殊に17世紀末の大震災で壊滅状態になった後、丘の上に新興ブルジョワジーが緻密な区画整理の上で建設したバロック建築の近代的な新市街=ラグーサ・スーペリオーレは、この島にあって異彩を放つものです。
一方、丘の下に広がる先住民のシクリ人が造った古代都市=ヒブラ・ヘライアの区画を生かして封建貴族たちが再建した、正にバロックの語源「ゆがんだ真珠」そのままに、壮大で装飾過多、迷宮のように入り組む旧市街こそが、「島の中の島」と呼ばれるラグーサ・イブラです。

駅を背にサン・ジョバンニ大聖堂を中心とする新市街を西に進むと間もなく行き当たる町外れの教会サンタ・マリア・デッラ・スカーラ。その左手、道に隠れて分かりにくい狭い階段を谷底目指して降り始めると、突如!…忽然と中世にタイムスリップしたかのような神秘的な町並みが、その眼下に広がります。
眩いばかりの青い空と鮮やかな対比を見せる、贅沢な彫刻や装飾を施された乳白色や蜂蜜色の建物が、どこまでもどこまでも迷路のように連なる風景。その圧巻の眺めに魂を奪われ、ただ呆然と立ち尽くす自分にふと気付きます。

イブラの独特の美をいち早く再発見したのは、映像に敏感な映画人たちでした。
坂を下り切り、意を決し西に広がる迷路を突き進めば、恐らくその先にあるのはタヴィアーニ兄弟の映画「カオス・シチリア物語」にたびたび登場した、バロック様式の回廊に椰子の木が並ぶシュールな光景、サン・ジョルジオ聖堂とドゥオーモ広場。
それとも、もうひとつの「ニューシネマ・パラダイス」と呼ばれるトルナトーレ監督の作品「明日を夢見て」で、無邪気な村人たちが嘘っぱちの映画オーディションに次々と臨んだサン・ジュゼッペ教会前かも。

人気も少ない街路を独り彷徨えば、旅慣れてすっかり忘れていた筈の、見知らぬ町に入り込んだ心細さと強い旅情に包まれて、軽い眩暈を覚えます。
静寂と乾いた空気、絵画のように美しい時間が止まった中世の町並み、そして見上げれば悲しいほどの抜けるような青空。。。

より奇妙な浮遊感をお求めの方には、夜のイブラをお勧めします。
宵闇が迫ろうとも明かりが灯る窓も極めて少ない家々。満天の星空と月明かりに照らされて、昼間の華麗な建物が幾つもの黒っぽい塊と化す様は、実に不気味で摩訶不思議。
闇への恐れ、自然への畏怖といったものを、どうやらここで否応無しに取り戻せそうです。

3)
今回ご一緒した、時を忘れ非日常を彷徨える中世の美しき迷宮=イブラを有する町ラグーサ…如何だったでしょうか。

それではまた、来月の旅をお楽しみに。
A la prochain fois !

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